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屋根裏のミケランジェロ
DROUOT パリの競売所
MICHELANGELO
屋根裏のミケランジェロ
パリは芸術の都と言われます。そして実際、星の数ほどのアーティストがパリの空の下で暮らしています。
5月のある金曜日、午後5時。
「 アパルトマンは6階までしかエレベーターがないので、そこで降りて階段で7階まで上がること。扉の開いている部屋だから直ぐ解る。」ある人物からのメモを手渡された私は、そのアトリエへと向かいました。
ここはパリ14区、アパルトマンの屋根裏部屋。ベネズエラ出身の画家のアトリエに招待されました。
無機質で真四角なエレベーターを6階で降りると螺旋階段が上へと繋がっています。階段を見上げるとそこから空気が変わっているかのように薄暗くなっています。階段を上った先は細い廊下。曇り空にもかかわらず夕方でもまだ明るい5月の光が共同トイレの開いた扉から漏れているのが見え、少し警戒しつつもそのまま歩いて行くと、一番奥まった部屋の扉が開いていました。
「彼の絵ははなんだかよく分からない」と周りの友人達は言いいます。そのテーマの難解さと突飛さは人々の想像を超え、時には笑いを誘う事もある程。見せられた彼の絵に対して「いったいコレは何なの?」と聞いたら最後、彼のベネズエラ訛りのフランス語で作品解説が始まり、果ては蚤の市での儲け方や世界の紛争問題等まで話しが飛び、見ている者はますます混乱してしまいます。彼の経歴は誰も知りません。そして彼の本名も知る人がいないので、 いつしか周りの人は彼の事を愛着を込めて「ミケランジュ」と呼んでいます。
(ミケランジュはMichelangeloのフランス語発音)
私が開いた扉の前に立つと、古ぼけたソファーに沈み込んでいた彼は大きくてごつい手を差し出し、握手で出迎えてくれました。 「Bonjour!」
そこはおよそ9平米程の小さなボロボロの屋根裏部屋。目にはいって来るのは彼の座っていた古ぼけたソファー、その上に乗っている熊とピエロのぬいぐるみ。彼を照らすライト、吊されたいくつもの巨大なレンズ、床に積み上げられた書物、古い地図、画材、鍋、付けっぱなしの小さなテレビ。そして所狭しと貼られた彼の作品の数々。窓の向こうに見えるパリの屋根。
彼がミケランジュ。
ベネズエラ出身。
芸術家のまなざし、険しい人生を歩んできた皺を肌に刻んでいます。
挨拶の後は直ぐさま、彼は私の目をのぞき込みながら一つ一つの作品の説明を力強く語りはじめました。話しは様々な方向へ跳躍し、その突飛さの裏にも、彼の持つ知識量の多さが垣間見られました。
壁中に貼ってある作品を目に付いた順に語ってくれます。
「ここ。ここに何が、見える?わかるだろう、鹿が見えるだろう。すごーく綺麗だろう。あぁ、ほんとに綺麗だ。」と、その美しさに興奮しつつ話すミケランジュ。
確かに、そういわれてみれば、目の中心の様な所に動物らしきものがみえる気もします。
「ほーら、ほーらっ。こうしてレンズをかざすとよく見えるだろう。素晴らしいだろう。ちゃんと見えているかい?」と、しきりにに見せるミケランジュ。部屋に幾つも下がりくるくると回っているレンズは、飾りではなく、彼の世界をよりよく見るための道具でした。
では、彼の作品をいくつかご紹介します。
『Avenue de l'Opera et Champs-Elysees avec deux poupees japonaises, civilisation 14eme siecle』
「14世紀文明、日本人形とオペラ大通りとシャンゼリゼ」
部分(シャンゼリゼ)
中央に見えるのはパリの凱旋門につづくシャンゼリゼとオペラ座。このパリを代表するモニュメントを脇から抱え込む様にしているのは、2体の日本人形。周りを縁取っているのは蚤の市で見つけてきた17世紀のラテン語書物の頁。彼曰く、フランスの中心部が日本文化、特に当時パリにあったという人形学校から受けた影響を描いている、との事です。実際14世紀に日本の人形学校があったのか、と考えるよりこの作品の中の出来事ととらえるべきでしょう。「人形」は彼の作品に繰り返し現れるモチーフです。
描き上げたばかりの新作です。手作りの額に額装されていた、唯一折り目のない作品。ほかの作品は場所がないからと、折ってしまわれていました。キャンバスに描く時も、フレームには張らず直接キャンバス地に描いている様です。
写真外部分(モンマルトル)
『LEONARDO DA VINCI CONTRE PAOLO UCCELLO』
「レオナルド・ダ・ヴィンチ対するパオロ・ウッチェロ」
部分(戦い)
右上画面はレオナルド・ダ・ヴィンチの世界。中央の建物はルーブル美術館、現在のルーブル美術館を象徴するピラミッドも湖面に反映したように描かれています。その上の女性がモナリザ、そして背後にレオナルド・ダ・ヴィンチ。ルーブルの右側にはモンマルトルの丘(部分画像参照)も見えます。右下画面はパオロ・ウッチェロの世界。イタリアの街でしょうか。2人の偉大な画家の争いの画です。
部分(イラク旧市街)
『LE MONDE DE GEORGE BUSH』
「ジョージ・ブッシュの世界」
部分(ペトロール)
部分(魔女)
部分(人形)
幅約60センチ長さ3メートルにもなる作品。上部は色彩豊かに描かれたイラク旧市街地区。しかし市街には紛争による赤い火が何カ所も見えます。街の周りには12星座や魔女などのシンボルがあります。絵の中心部にはジョージ・ブッシュが描かれています。下部はペトロールを青く描いていますがその上の白い部分にはイスラム教の聖地メッカがあり、全体を見るとドクロの様にも見えます。現在世界でおこっている紛争の根元を描いています。
最後、帰り間際に1冊の本を推薦されました。トップの画像にある「ILLUSION」(イリュージョン)。だまし絵やシンボル、デカルコマニーの様々なジャンルの図を紹介し、それらを見た時の人の反応等について書かれています。
ミケランジュに別れを告げ、再び狭い廊下と階段とエレベーターを超えて建物の外へ1歩足を踏み出すと、そこには現実のパリの街があり、彼との出会いはまるで幻想の様でした。
ミケランジュの個性や考えをお伝えするのはこのスペースでは難しく、彼の作品もスペース不足のため撮影が困難で作品部分の紹介となりました。もしみなさんがパリに行く機会がありましたら、実際アーティストと交流してそのアトリエに立ち寄ってみてはどうでしょうか。非常に印象深い経験となるでしょう。
彼の作品にご興味がある方は、もしくは彼に直接会いたいと思った方はPatati-tataまでご連絡下さい。
もしかすると、本当に現代のミケランジェロに会えるかもしれません。
2006.06.18
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